某スーツ量販店でよく見る、スーツを2着まとめて買うと2着目は半額、もしくは9,800円などの格安価格で提供するサービスがあります。
なんで2着目がそんなに安いの?
実は1着目に2着目の料金が入ってるのでは?
以前からこの仕組みが気になっていたので調べてみました。
調べて見ると2着目を半額にしても、十分に利益が出る仕組みなのがわかります。
※2011年に書かれた本を参考に記事を書いているので、記載している内容が古い可能性があります。考え方や仕組みを参考にしていただければと思います。
29,800円のスーツの価格構造を見てみる
まずは仕組みを知るために、例として29,800円のスーツがどのような価格構造になっているか見てみましょう!
売値:29,800円
仕入れ値:約3,600円(12~13%)
人件費:約3,600円(35%)
家賃、光熱費、宣伝費:約12,665円(42.5%)
純利益:約3,105円(10.4%)
人件費と家賃、光熱費、宣伝費が飛び抜けて高いです。
アパレル産業の人件費率は約20%と言われてるのでかなり割高です。
スーツ量販店は人件費が高い
スーツ量販店は他のアパレル産業と比べて人件費がかなり高いです。
なぜならスーツ量販店の接客は基本的に1対1です。
商品の案内、試着、寸法、在庫の確認、会計など最初から最後まで1人のお客さんをずっと対応します。
また基本的に会社員が相手のお店なので、平日の昼間はお客さんが少なくガラガラです。
でも店員がいないわけにはいかないので、どんなに空いていても人を配置しておく必要があります。
こうやって見るとかなり効率が悪く見えますね。
スーツ量販店の経費が高くなる理由
- 売り場には一定の広さが必要
- 同じ商品でもサイズや色・柄など様々なバリエーションが必要で在庫予備軍がかなり多い
- 平日の昼間のお客さんの少なさは、家賃の割高につながる
- 購買頻度が低い商品
上記のような販売効率の悪さが人件費、およびその他経費の割合を跳ね上げています。
2着目半額の仕組み
スーツを1着売るのはかなり効率が悪いのがわかりますね。
次に1着目のスーツの価格構造と、2着目を半額で買った場合のスーツの価格構造を比べてみましょう。
2着目を格安にできる仕組みが見えてきます。
売値:2,9800円
仕入れ値:約3,600円(12~13%)
人件費:約3,600円(35%)
家賃、光熱費、宣伝費:約12,665円(42.5%)
純利益:約3,105円(10.4%)
売値:14,900円(半額)
仕入れ値:約3,600円(約24%)
人件費:ほぼ0円
家賃、光熱費、宣伝費:ほぼ0円
純利益:約11,300円(約76%)
1着のスーツを販売するのとほぼ同じ接客時間でもう1着売れるので、接客にかかる人件費はほぼゼロ。
また家賃や光熱費なども「時間あたり」で計算できるので、2着目のために追加でかかるコストもほぼゼロです。
つまり2着目を売るために必要なコストはほぼゼロということになります。
2着目の売り値である14,900円から、仕入れ値3,600円を引いた11,300円がそのまま利益になります。
定価である1着目の純利益が約3,105円なのに対して、2着目の利益は半額で販売しても11,300円です。
最後に2着分の代金44,700円の価格構造を見てみます。
売値:44,700円
仕入れ値:約7,200円(約16.1%)
人件費:10,430円(約23.3%)
その他経費:12,665円(約28.3%)
純利益:約14,405円(約32.3%)
人件費率はアパレル産業の人件費率(約20%)にかなり近づきます。
2着売ることを前提で考えられてるような気がしますね。
結局スーツ2着目半額ってお得なの?
単純に2着目はコストがかからないため、安く買うことができるのでお客さんはお得です。
ただお店側が苦しい思いをして、半額にしているわけではありません。
お店側にも大きなメリットがあるのです。
10人に1着ずつ売るより、1人のお客さんに10着売った方がコストもかからず利益もかなり大きいです。
なのでまとめ買いするときは価格交渉ができる可能性が高いです。
まとめ
2着目半額の仕組みわかりましたでしょうか。
人件費、その他経費を落とすことで、2着目を半額にしても高い利益が出せる仕組みになっています。
ずっと怪しい…。と思っていた自分はすごいスッキリしました(笑)
またこういったサービスを分析することで、企業戦略が見えてくるのが面白いですよね!
参考書籍
今回は金子哲雄さんの値段のカラクリと言う本を参考に書きました。
2011年に出版された本ですが、今読んでもとても参考になります。
スーツ以外でも牛丼、マンション販売、激安メガネショップ、AV業界など様々な商品やサービスの仕組みを分析&解説されているので、興味のある方はぜひ読んでみて下さい。
ちなみに金子哲雄さんは1着4万円のスーツを6着で9万円まで値切ったそうです(笑)
1着1万5千円…。
ここまで詳しいお客さんが来ると接客するのも大変そうですね。
自分は値切ったり出来るタイプじゃありませんが、価格の仕組みを知っていることで営業トークの防御は出来そうです。